夏の贈答について寄稿させていただきました。

8月23日は、二十四節気の処暑でした。暑さが少しやわらぎ、朝の風や夜の虫の声に秋の気配が漂いだすころとされています。とはいえ、まだまだ残暑が厳しいこの頃です。

先日、日本茶と京都の情報を伝えていらっしゃる月刊誌「茶の間」7月号にて、贈答のマナーについて寄稿ささていただく機会を頂戴いたしました。日頃お世話になっている大切な方へ感謝の気持ちを伝える「お中元」のマナーや文化についてご質問にお答えいたしました。

お中元の風習は、中国の三元とよばれる行事の一つ「中元」が仏教の伝来とともに日本に伝わり、盆の行事と融合し、江戸時代以降お盆の時期に親類やお世話になった方へ贈り物とする習慣となり現在に至っています。近年はライフスタイルの変化や簡略化に伴い、お中元を贈るという習慣が減少傾向にあります。またお渡しする方法も、宅配便や郵送といった方法が主流になり、持参してお渡しするという方法はあまり見られなくなりました。時代の流れに応じて、贈答の方法やマナーが変化するのは当然のことですが、本来の意味や意義を大切にしつつ、時代に合わせていくということが大切です。もともとは、実際に足を運んでお渡しする方法が丁寧で礼を重んじる方法とされましたが、現代においては、直接持参すると相手方に気を遣わせてしまうという心配もありますね。しかしながら、品物だけをお送りするということではなく、日頃の感謝の気持ち、夏の暑い時期に相手の健康を気遣う気持ちを、お伝えすることを忘れずに。お手紙や葉書を書くのがどうも苦手…という方は、メールを活用するなどして、言葉を送るようにしたいものです。

今年の夏もコロナ禍となりました。夏の風物詩と言われるお祭りや行事も縮小や中止となり寂しいことです。夏休みの旅行、お盆の帰省といったこともあきらめざるを得なかった方も多いのではないでしょうか。寄稿させていただいた内容にも書かせていただいたのですが、人と会うことがままならない状況が続く今、お中元という素敵な日本の習慣を活用して感謝の気持ちを伝えるのも良い方法です。また、電話やメールだけでなく、手書きの良さを見直してみるのも良いのではないでしょうか。お中元というと、贈る時期はいつ頃か、何を贈ればいいのか、のし紙の書き方はどうするのか、等々ルールや決まり事が気になるところかと思います。基本的なマナーを押さえることは必要ですが、大切なことは、相手への感謝や気遣いの気持ちを伝えることです。
京都マナー文化協会では、歴史や伝統から学びながら、現代の暮らしを豊かにするお手伝いをしてまいりたいと思っております。
今は人が集まることが難しい状況ですので、コラム記事のようなかたちでこちらにアップしてきたいと思っております。講座再開させていただく際はお知らせいたします。